認知症の母との面会がつらい|「帰りたい」を聞き続けた私が会話を変えた理由

介護

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認知症の母が施設に入ってから、私は面会へ行くことがだんだんつらくなっていきました。

正直に言うと、面会の日が近づくと、
「今日は行きたくないな」
と思うこともありました。

母に会うと、毎回のように泣きながら、

「いつ帰れる?」
「もうここは嫌」

と訴えられました。

それだけではなく、
誰かに物を盗られたという話や、人への不満、悪口のような話が続くこともありました。

母にとっては、その時に本当に感じている不安や苦しさだったのだと思います。

でも、それを毎回聞き続ける私は、
面会が終わるころには精神的にぐったりしていました。

「私ばかり」と思ってしまうこともありました

施設から、
「お母さまがエレベーターの前にずっといて、外へ出ようとしています」
と連絡をいただくことも何度かありました。

高齢の父もなかなか面会には行けず、
妹たちも仕事や住んでいる場所の関係で、頻繁に行くことは難しい状況でした。

そんな中で、

「どうして私ばかりなんだろう」

という気持ちになることもありました。

母が心配だから行かなければと思う一方で、
面会へ行けばまた「帰りたい」と泣かれる。

その繰り返しで、
面会の前には吐き気を感じるほど気持ちが重くなることもありました。

このままでは、私自身まで苦しくなってしまう。

そう思ったとき、
私は面会の仕方を少し変えてみようと考えました。

「母の話を聞く」だけの面会をやめてみました

それまでは、
「母が話したいことを聞いてあげなくては」
という気持ちが強くありました。

でも、母の話に任せていると、
どうしても「帰りたい」「嫌だ」「つらい」という話が中心になってしまいます。

もちろん、その気持ちを否定したいわけではありません。

ただ、つらい気持ちだけを何度も繰り返すことで、
母も私も、その気持ちの中から抜けられなくなっているように感じました。

そこで私は、
「聞いてあげる面会」から、「私が少し会話をリードする面会」に変えてみよう
と思いました。

一方的に話すのではなく、質問してみる

私はもともと、人との会話がそれほど得意な方ではありません。

自分から楽しい話を次々にするというのも、あまり得意ではありませんでした。

それなら、
私が一方的に話すのではなく、
母に質問してみようと思いました。

「どんな花が好きだった?」
「どんな色の服が好き?」
「どんな歌が好きだった?」

そんなふうに、母が昔好きだったことを一つずつ聞いてみました。

会話が長く続かないこともあります。
答えが出てこないこともあります。

それでも、今までとは違う言葉が出てくることがありました。

花の名前。
好きな色。
歌の話。
昔楽しかったこと。

私はそこで初めて、
「帰りたい」という母の今の気持ちだけではなく、
その奥にある、昔の母の姿にも目を向けられるようになりました。

「寂しい気持ち」を上塗りするのではなく、楽しい思い出を重ねたい

母との会話を少しリードするようになってから、
私は面会の時間について、少し違う考え方をするようになりました。

それまでは、
母の「帰りたい」「ここは嫌」という気持ちを受け止めることばかり考えていました。

でも、つらい気持ちだけを何度も繰り返していると、
母の寂しさの上に、さらに寂しい気持ちを重ねてしまっているようにも感じました。

それなら、
昔楽しかったことや好きだったことを少しでも思い出してもらい、
その時間だけでも、寂しい気持ちの上に
楽しい思い出を重ねていけたらいい
と思うようになりました。

花の話をする。
好きだった色の話をする。
歌の話をする。

会話が続かなくても、
一つでも違う話ができた日は、
私自身も「今日は少し違う時間を過ごせた」と感じることがありました。

絵本を作ることが、面会の目的にもなりました

そんな会話を続ける中で、
私は母の思い出を絵本にしてみようと考えるようになりました。

「どんなお話にしたい?」
「どんな花が好き?」
「どんな服の色が好き?」

絵本を作るための質問なら、
私にも自然に会話を始めることができました。

母に「絵本を作ろうと思う」と話したとき、
少し照れたような、うれしそうな表情をしたことも覚えています。

あるとき、
「主人公の顔写真を撮るよ」
と言って写真を撮ったところ、
母は久しぶりににっこり笑ってくれました。

「なるべく笑顔でいようと思うの」

と、そのとき母は言いました。

普段はなかなか笑顔になれない日もあります。
それでも、その一瞬の笑顔を見られたことは、
私にとってとても大きな出来事でした。

私自身の面会への気持ちも少し変わりました

会話の仕方を変えたからといって、
母が「帰りたい」と言わなくなったわけではありません。

不満を口にする日もありますし、
面会がいつも穏やかに終わるわけでもありません。

でも、
「今日は何を聞いてみよう」
「次の絵本のために、どんな話をしてみよう」
と考えるようになったことで、
私自身の面会に対する気持ちは少しずつ変わってきました。

以前は、面会前に吐き気を感じるほど気持ちが重くなることもありました。

今も「今日は行きたくないな」と思う日はあります。

それでも、
母のつらい話をただ聞き続けるだけではなく、
私から楽しい思い出につながる質問をしてみようと思えるようになったことで、
以前ほど面会そのものを怖く感じなくなってきました。

家族だからこそ、つらいこともあると思います

認知症のある家族との面会は、
いつも優しい気持ちだけで向き合えるものではないと思います。

「また同じ話を聞くのか」と思ってしまったり、
「どうして私ばかり」と感じたり、
会いに行くこと自体がつらくなることもあります。

私自身がそうでした。

だから、
「もっと優しくしなければ」
と自分を追い込むのではなく、
自分が少し楽に話せる方法を探してもいい
のではないかと思っています。

私の場合は、
母が好きだったことを質問することが、その一つでした。

これは私と母の場合の体験です。
同じ方法がすべての方に合うとは限りません。

それでも、
もし面会の会話に疲れている方がいたら、
その方が昔好きだったことを一つだけ聞いてみることから始めてもいいかもしれません。

母との会話から「思い出絵本」が生まれました

花、歌、好きだった色、山歩き。

母との小さな会話を集めて、
私は「ふみこさん」という主人公の絵本を作り始めました。

認知症になった今の母だけではなく、
優しかった母、楽しそうに歌っていた母、
花や色を好きだった母の姿も、
家族や孫たちに残しておきたいと思ったからです。

今では、絵本を作ることが
母との会話のきっかけの一つになっています。

認知症の母との会話で、実際にどんな質問をすると話が広がったのかは、こちらの記事にまとめています。

認知症の母との会話に困ったとき|会話が広がった5つのきっかけ

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